猫猫置き場

猫猫事件帖の新章をとりあえずアップするためのページ

猫猫事件帳 新章

猫猫事件帳 新章 最終話

「なんか、意外だな」「何がよ」 意外にも静かな返事であった。水守綾は冷静に、それでいてごく当たり前のように答えた。「君がこういうことに手を貸すのが」 頬杖を突きながら胡散臭い微笑みを向ける男、壱川遵はどこか楽しそうだった。前なら無性に苛つい…

猫猫事件帳 新章 その六

恵まれた環境で育ってきたという自覚がある。 特に不満も、不都合も、不条理だと感じることすらほとんどなかった。『学校はどうだ? ちゃんと行ってるか?』「行ってないと思う?」『いいや、お前は誰に似たのか真面目だからなあ。まあ、あんまり無理するな…

猫猫事件帳 新章 その伍

刑事になるのは、怪盗になるよりも大変だった。 それもそうだ、怪盗なんてお膳立てしてもらったようなものだから、最初から必要だったのはほとんど覚悟だけだった。 たまに、刑事よりも怪盗の方が向いていたんじゃないかと頭をよぎる。そっちの方が、好きな…

猫猫事件帳 新章 その四

自分より非力な人間なんて腐るほど見てきた。なんなら大抵の人間はそうだから、明乃にとって自分より他人が弱いことは当たり前のことだ。 どうやら普通の人間は、大男を吹っ飛ばすほどの力はないらしいし、天井から綺麗に着地することもできないらしい。その…

猫猫事件帳 新章 その参

「遅ぇな、明乃のやつ」 ふと時計を見ると、明乃が珍しくまだ帰っていないのだと気付いて思わず口から洩れる。 明乃がいないと静かだからか、集中して作業をしてしまっていたらしい。改良機を作るのにも骨が折れる。「まあ、あいつなら大丈夫か」 自分を安心…

猫猫事件帳 新章 その弐

「で、なんでお前らがここにいんだよ」 東雲 宵一は不機嫌だった。 もとより盗む予定だった絵画にはさして興味はなかった。今日は新しく作ったいくつかの試作機のテストをメインとした日だったからだ。 だが、それも妨害されたとなれば話は変わってくる。そ…

猫猫事件帳 新章 その壱

木野宮きのみはご機嫌だった。 ずさんな管理しかしていない財布の中身を昼休みに覗いたら、なんと三百円も入っていたからだ。 授業中に三百円で買えるものをひとしきり思い浮かべて、放課後になるまでに決めねばという使命に従っていたら、ノートの中身はお…