猫猫置き場

猫猫事件帖の新章をとりあえずアップするためのページ

2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧

猫猫事件帖 最終章 そして怪盗はいなくなる 最終話

「……後悔した方がいい。私たちがやったことは八百長のようなものだ。君と手を組んでいなければ、きっと私はこんなに有名になれなかった」「そんなことは―――」 壱川遵は言葉に詰まった。彼が言いたいことも勿論わかっていたし、それに反論するのもおかしなこ…

猫猫事件帖 最終章 そして怪盗はいなくなる 六

久しぶりにいい夢を見た。 夢の中で自分は、懐かしい衣装に袖を通して笑っていた。それはまるで子供が悪戯に成功した時のような気持ちで、純粋にただ楽しい、という気持ちだけが壱川遵を突き動かしていた。 目的なんてなんでもよかったのかもしれない。怪盗…

猫猫事件帖 最終章 そして怪盗はいなくなる 伍

常盤社は静かに病室の扉を開けた。 そこに眠る少女に、また新しい花を届けに来たのだ。彼女が目覚めたとき、飾られた花を見てきっと不機嫌そうな顔をすることだろう。想像すればなんとなく笑えてきて、常盤は口元を隠すように手を添えた。「失礼します」 言…

猫猫事件帖 最終章 そして怪盗はいなくなる 四

「…………」 「どうした? 京佑」 手に持ったトランプと睨めっこしながら、浅野大洋は隣に座る深海京佑が物思いに耽っていることに気付いた。真剣にババ抜きをしているというよりは、心ここに在らずと言った雰囲気だ。 宮山紅葉が浅野の手札から一枚トランプを…

猫猫事件帖 最終章 そして怪盗はいなくなる 参

東雲宵一は心底苦い顔をしていた。 高校生の時から一人暮らしを始めたから、家が静かであることにはもう慣れていた。ある日明乃と出会って、共に生活をするようになってから多少騒がしくなったものの、最近ではよく出かけるから部屋が静かな日もよくある。 …

猫猫事件帖 最終章 そして怪盗はいなくなる 弐

東雲宵一は冷静だった。焦る必要がないわけではない。生死に関わることはいつまで経っても慣れないだろう。だけど冷静だった。「んで何だ? 恨みか? 妬みか?」 言いながらポケットから更に様々なガジェットを取り出す。マウンテンパーカーのポケットにも、…