2024-09-10から1日間の記事一覧
物欲がない。 と、東雲宵一に言われても、明乃にはピンと来なかった。 お菓子を作るためにたくさん材料を買っているし、たまに家電の買い替えだってお願いする。何か欲しいものがないかと聞かれても、確かにすぐには浮かばないけれど。 「う、うううううう」…
浅野大洋は、特に自慢できるものがない。 強いて言うなら趣味の料理に自信がある。この前焼いたアップルパイは最高だった。 それからまあ、体力も人よりあるかもしれない。昔から体だけは丈夫で、好きな教科は体育、嫌いな教科はそれ以外だった。 まあ、それ…
前回の冒頭に戻る。 半信半疑で連絡先を交換してから一日。とかなんとか言いながらなかったことのように連絡なんて来ないんじゃないかと疑い始めていた頃。 早速電話がかかってきたと思ったら、いきなり博物館の裏口まで来てほしいなんて言われて、急いで準…
「…………」「君、本当に何を考えてるのかわかりやすいな?」「アタシ今どんな顔してる?」「すごく怒った顔」「……でしょうね」 水守綾は呆れたような顔で呟いた。 密室の中で男と二人きり。 問題なのはその密室というのが、とある博物館のロッカーの中であるこ…
外が暗くなるたびに胸が躍るような気持ちになる。 夜はいつだって壱川遵の味方をした。黒色のマントは宵闇によく溶けて、人々は彼を見失う。それがおかしくたまらなかったと、夜を迎えるたびに思い出して口元が緩む。「ねえ、壱川くん聞いてる?」「ああ、ご…